1. なぜ今、「災害時にも止まらない運用」を考えるべきなのか
9月1日の「防災の日」は、1923年の関東大震災を教訓として、一人ひとりの防災対策の重要性を広く国民に理解してもらうことを目的に制定されました。近年では前述の「令和8年熊本地震」「能登半島地震」など大規模な地震が相次ぐ中、公共施設の運営者にとっても、平時の利便性だけでなく「有事にきちんと機能するかどうか」という視点から施設運用を見直す機会が増えています。
当社の過去のコラムでは、スマートロックの導入メリットとして「利便性の向上」や「業務負担の軽減」といった平時のメリットを中心にご紹介しました。しかし、公共施設の多くは災害発生時に避難所としての役割も担うため、平時の便利さだけでなく、災害時にも確実に機能する仕組みであるかどうかを併せて検討することが不可欠です。
では、実際に公共施設は避難所としてどの程度の規模でその役割を担っているのでしょうか。
2. 公共施設が避難所として担う役割の大きさ
公共施設予約システムの対象となる体育館、公民館、コミュニティセンターなどの多くは、避難所としての役割も兼ねています。文部科学省が公表した調査によれば、全国の公立学校のうち91.7%が避難所として指定されている※1という結果が出ています。また、内閣府の調査によれば、全国に約8万3,000か所の指定避難所が存在するとされています※2。
これらの数値からもわかるように、平常時は「予約して利用する施設」である公共施設が、災害発生時には「地域住民の命を守る避難所」としての役割を担います。このため、施設予約システムやスマートロックを選定する際には、平時の利便性や業務効率化といったメリットに加えて、災害時にも確実に施設を開放でき、避難所としての機能を維持できるかという観点からも評価することが不可欠です。
※1 出典:文部科学省「避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査の結果について」(2024年11月1日時点)
※2 出典:内閣府「指定避難所等の指定状況等の調査結果」(2025年10月1日時点)
3. 二つの震災が突きつけた「鍵」と「電源」というリアルな課題
直近に発生した二つの大規模災害は、公共施設が避難所として機能する上でつまずきやすいポイントを、それぞれ異なる角度から浮き彫りにしました。
「能登半島地震」では、能登地域の6市町にある14か所の指定避難所などで、施設がすぐに開けられず、やむなく窓ガラスを割って避難したケースが相次いだと報じられています※3。これは、鍵を管理する職員が避難所に到着して解錠するよりも先に、住民が避難所へ到着してしまったことが背景にあります。つまり、「職員が物理的な鍵を保管場所から持ち出し、現地へ駆けつけて解錠する」という運用そのものが、いざという時の解錠手段を狭めてしまうという課題を浮き彫りにした事例といえます。
一方「令和8年熊本地震」では、震度7・震度6強を観測した熊本県内の8市町において、少なくとも23か所の指定避難所が停電の影響を受け、施設の開設や運営に支障が出る事態が報じられています。スマートロックにおいても、この教訓は無視できません。もし外部電源供給が必須のスマートロックを採用していれば、停電時に解錠が困難となります。つまり、スマートロックの給電方式次第で、公共施設の防災機能自体が止まってしまうのです。
「能登半島地震」では鍵の解錠にまつわる運用が、「令和8年熊本地震」では給電方式が、それぞれ避難所運営のボトルネックとなりました。この二つの教訓を踏まえると、公共施設の防災機能を見直す際には、いざという時の鍵の解錠にまつわる運用に加え、停電時にも稼働し続けられる給電方式まで含めて検討し、避難所として運営するための業務継続計画を立てる必要があるといえます。
※3 出典:TBS NEWS DIG「〈能登半島地震〉入れない避難所 解消へキーボックス設置」
4. BCPの観点からスマートロックに求められる要件
前章で示した二つの課題を踏まえると、スマートロックを選定する際には「平時の便利さ」だけでなく「災害時の稼働継続性」を評価軸に加えることが重要です。具体的には、以下の点を確認する必要があります。
- 停電時にも動作するか(電池駆動であるかどうか)
- 通信障害が発生した場合でも解錠できるか(Wi-Fiや携帯通信網に依存せずオフラインで動作するか)
- 職員が現地に到着する前でも住民自身が解錠できる仕組みになっているか
これは、当社が過去のコラムでお伝えした「施設の電波状況・給電方式」という導入時の考慮点を、BCPという観点からさらに一歩深めた視点といえます。平時における通信環境の安定性だけでなく、災害というもっとも過酷な条件下でも動作し続けられるかどうかまで見据えて選定することが、公共施設におけるスマートロック導入では特に重要です。
5. 施設運営者が導入前に確認しておきたい実務的な準備
スマートロックそのものの機能や性能を確認するだけでは、災害時に運用が止まらない体制は完成しません。実際に運用を継続できるかどうかは、導入前にどれだけ実務面の準備を整えられているかにかかっています。
まず見直したいのが、解錠権限の分散です。冒頭で触れた「能登半島地震」の事例が示す通り、鍵という共有・複製が難しい資産を特定の1人だけに委ねてしまうと、その人が現地に到着できない場合、施設は誰にも開けられない状態に陥ってしまいます。
スマートロックを導入する際は、この教訓を踏まえ、解錠権限を複数の職員や関係者に付与できる体制を事前に構築しておくことが重要です。誰か1人に依存せず、複数の経路から解錠にアクセスできる仕組みを整えておくことが、災害時の対応力を大きく左右します。
次に重要なのが、平常時の運用と災害時の運用を切り分ける「災害時モード」の設計です。通常の予約に基づく解錠フローとは別に、災害発生時にどのような手順で施設を開放するのか、誰が判断し、誰が実行するのかを事前に定めておく必要があります。
併せて、長期停電時に備えた電池の交換計画や在庫の確保、通信・システムが完全に停止した場合の物理鍵によるバックアップ手段も、あらかじめ準備しておくべき項目です。
最後に、これらの準備は施設管理部門だけで完結するものではありません。自治体内の防災担当部門と連携し、指定避難所としての開設フローの中にスマートロックの運用手順を組み込んでおくことで、初めて実効性のある備えとなります。平時の便利さだけでなく、有事における確実な運用継続を見据えた準備こそが、スマートロック選定と並んで欠かせない視点です。
6. 当社のスマートロック連携が実現する「災害時にも止まらない運用」
当社の「Seagull-LC Stagia 施設予約システム」で連携しているスマートロックは、ブロックチェーンロック株式会社製のキーボックス「Smart Lock Box 3S」との連携を想定しています。このキーボックスには、パスコードを生成する機能自体が内蔵されているため、Wi-Fi等のネットワーク通信を必要とせずオフラインで稼働できる点が大きな特長です。
また、施設管理者や防災担当組織の関係者にて、事前に管理者用アプリをインストールしておいてもらうことで、管理者権限でパスコード無しでの開錠も可能です。
さらに、キーボックスの電源にはリチウム電池CR123A×2本を使用しており、1日10回程度の開閉を想定した場合で最大24ヶ月駆動するとされています。停電が発生してもキーボックス自体の稼働には影響がないため、「令和8年熊本地震」で顕在化した「停電により施設機能が止まる」というリスクに対しても、鍵の管理という側面から備えることができます。
加えて、現在使用している物理鍵をそのままキーボックスの中に収納する方式であるため、扉の種類を問わず導入できる点も、様々な形状の公共施設を管理する自治体様にとって導入しやすい要素となっています。
このように、当社のスマートロック連携は、平時の利便性向上と業務負担の軽減だけでなく、災害時にも止まらない運用継続という観点からもメリットをご提供できる仕組みとなっています。
9月1日の「防災の日」を機に、皆様の施設における鍵管理体制や災害時の運用フローを、ぜひ一度見直してみてはいかがでしょうか。
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