2025年9月17日 お役立ち情報

デジタル活用推進事業債とは?自治体DXを加速させる財政支援制度の活用法

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近年、日本全国の自治体では「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉をよく耳にするようになりました。人口減少や高齢化が進む中、限られた人的リソースで質の高い行政サービスを提供し続けるためには、デジタル技術の活用が不可欠となっています。しかし、多くの自治体では予算の制約がデジタル化推進の大きな壁となっているのが現状です。
そこで注目されているのが「デジタル活用推進事業債」という財政支援制度です。この制度は自治体のデジタル化を財政面から強力にバックアップするもので、適切に活用することで住民サービスの向上と業務効率化を同時に実現できる可能性を秘めています。
本コラムでは、デジタル活用推進事業債の概要から具体的な活用事例、そして導入のポイントまでを詳しく解説します。特に斎場施設予約システムや広聴システムなど、住民の利便性向上に直結するシステムへの活用方法についても触れていきます。

デジタル活用推進事業債とは?自治体DXを加速させる財政支援制度の活用法

デジタル活用推進事業債の概要

デジタル活用推進事業債は、総務省が推進する「自治体DX推進計画」の一環として創設された地方債制度です。自治体がデジタル技術を活用した住民サービスの向上や行政の効率化を図るためのシステム導入等に要する経費について、財政支援を行うものです。

制度の基本的な枠組み

デジタル活用推進事業債の主な特徴は以下の通りです。

充当率:対象事業費の90%充当可能

交付税措置:元利償還金に対する50%

対象期間:~令和11年度まで(予定)

この制度により、自治体は初期投資の負担を大幅に軽減しながら、必要なデジタル基盤を整備することができます。実質的な、自治体の財政的ハードルが下がることで、これまで予算の制約から見送られてきた多くのデジタル化プロジェクトが実現可能になります。

対象となる事業範囲

デジタル活用推進事業債の対象となる事業は多岐にわたります。

1.自治体の情報システムの共通化

2.マイナンバーカードの普及促進

3.行政手続のオンライン化

4.AIの利用推進

5.テレワーク環境の整備

6.セキュリティ対策の強化

7.地域社会のデジタル化の推進

特に注目すべきは、単なる内部業務の効率化だけでなく、「住民の利便性向上」に直結するシステム導入も対象となっている点です。これにより、斎場施設予約システムや広聴システム、施設予約システムなど、住民と行政をつなぐインターフェースのデジタル化にも活用できます。

自治体が抱える課題とデジタル活用推進事業債の活用メリット

自治体が直面する課題

現在、多くの自治体が以下のような課題に直面しています。

・人口減少と職員の高齢化

 行政サービスを担う人材の確保が困難になっている

・財政の硬直化

 社会保障費の増大により、新規事業への投資余力が減少

・住民ニーズの多様化

 24時間365日対応や手続きの簡素化など、サービス向上への期待

・災害対応や感染症対策

 非常時でも行政サービスを継続する体制の必要性

これらの課題に対応するためには、デジタル技術の活用が不可欠ですが、多くの自治体では「予算がない」「専門人材がいない」といった理由で導入が進んでいません。

デジタル活用推進事業債活用のメリット

デジタル活用推進事業債を活用することで、自治体には以下のようなメリットがあります。

1.財政負担の軽減

   初期投資の90%起債可能で、さらに元利償還金の50%が交付税措置されるため、実質的な負担が大幅に軽減されます。

2.計画的な投資が可能

   複数年度にわたる計画的なデジタル投資が可能になり、段階的な導入や効果検証を行いながら進められます。

3.住民サービスの即時向上

   予算制約が緩和されることで、住民の利便性向上に直結するシステムを優先的に導入できます。

4.職員の業務効率化

   定型業務の自動化やデジタル化により、限られた人的リソースを創造的な業務や対人サービスに振り向けられます。

5.災害時の業務継続性向上

   クラウドシステムの導入などにより、災害時でも行政サービスを継続する体制を構築できます。

デジタル活用推進事業債を活用したシステム導入事例

デジタル活用推進事業債を活用して、多くの自治体で様々なシステムの導入が進んでいます。ここでは、特に住民サービスの向上に直結する二つのシステム導入事例を詳しく見ていきましょう。

斎場施設予約システムの導入事例

従来、多くの自治体では斎場や火葬場の予約は電話や窓口での受付が主流でした。しかし、このプロセスには以下のような課題がありました。

・受付時間が平日の業務時間内に限られる

・予約状況の確認に時間がかかる

・葬儀社と自治体の間で何度も連絡のやり取りが必要

・急な葬儀の場合、手続きが煩雑で遺族の負担が大きい

しかし、斎場施設予約システム導入の結果、以下のような効果が得られました。

1.住民満足度の向上:遺族の負担軽減と手続きの簡素化

2.業務効率化:予約受付・管理業務の工数が約70%削減

3.ミス防止:二重予約や記入ミスなどのヒューマンエラーが大幅に減少

4.データ活用:利用統計の自動集計により、施設運営の最適化が可能に

\斎場施設予約システムを導入した施設の事例/

広聴システムの導入事例

住民の声を行政に反映させるための「広聴」も、デジタル化によって大きく変わる分野です。従来、以下のような課題を抱えている自治体が非常に多いです。

・意見箱や電話、メールなど複数の広聴チャネルの一元管理ができていない

・寄せられた意見の分類や集計に多大な労力がかかる

・対応状況の可視化や進捗管理が不十分

・住民へのフィードバックが遅れがちになる

しかし、広聴システム導入の結果、以下のような効果が得られました。

1.住民意見への対応時間が平均40%短縮

2.担当者の業務負担軽減(分類・集計作業が約80%削減)

3.住民からの評価向上

4.データに基づく政策立案の促進

\広聴システムを導入した施設の事例/

公共施設予約システムの導入事例

デジタル庁及び総務省が「地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続」として「文化・スポーツ施設等の利用予約」を掲げる中、体育館や公民館といった公共施設の予約をオンライン化する動きが全国で広がりを見せています。

従来のように施設の予約を電話や窓口で受け付ける場合、以下のような点が課題となります。

・予約可能時間が施設の開館時間内に限定される

・空き状況の確認に時間を要する

・予約台帳の手書き管理による事務負担やミス発生のリスク

・抽選会や利用調整会の参加者が限定されることによる不公平感の発生

・利用実績や統計データの集計に時間がかかる

施設予約システムを導入することで以下のような効果が得られます。

1.利便性向上:パソコン・タブレット・スマートフォンからいつでもどこでも予約が可能に

2.予約管理の効率化:予約状況の確認や予約処理がスピーディに

3.抽選機能:手動/自動のシステム抽選により利用機会の公平性を確保

4.収納管理の簡素化:利用料金の収納・還付の管理が容易に

5.データ活用:利用実績や統計データをCSV形式で出力可能

6.地域社会DXの推進:キャッシュレス決済やスマートロック機能等との連携で住民の利便性向上と職員の業務効率化を同時に実現

\施設予約システムを導入した施設の事例/

デジタル活用推進事業債を活用したシステム導入のポイント

デジタル活用推進事業債を最大限に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、成功事例から導き出された導入のコツをご紹介します。

1.住民目線での導入効果を明確化する

デジタル活用推進事業債の申請にあたっては、「住民サービスの向上」という観点が重要です。単なる業務効率化だけでなく、以下のような住民メリットを具体的に示すことが求められます。

・24時間365日サービス利用可能になる点

・来庁不要で手続きが完結する点

・手続き時間の短縮効果

・書類記入の手間削減

・進捗状況の可視化

例えば斎場施設予約システムであれば、「遺族が悲しみの中で行う手続きの負担軽減」という人間的な側面も重視されます。

2.費用対効果を定量的に示す

財政部門を説得するためには、定量的な費用対効果の提示が効果的です。

・導入コスト(初期費用・ランニングコスト)

・デジタル活用推進事業債適用後の実質負担額

・業務効率化による人件費削減効果

・住民の移動時間・待ち時間の削減による社会的コスト削減

・紙・郵送費等の削減効果

これらを5年間程度の中期的視点で試算し、投資回収期間を明確にすることで、財政部門の理解を得やすくなります。

3.段階的な導入計画を立てる

大規模なシステム刷新は失敗リスクも高まります。成功している自治体の多くは、以下のような段階的アプローチを採用しています。

第1フェーズ:住民ニーズの高い一部機能から導入

第2フェーズ:利用状況を分析し、機能拡張

第3フェーズ:他システムとの連携強化

例えば広聴システムであれば、まずは意見収集と管理機能を導入し、次にAI分析機能を追加、最終的に政策立案支援機能まで拡張するといった段階的アプローチが効果的です。

導入検討から実現までのステップ

デジタル活用推進事業債を活用したシステム導入を成功させるためには、計画的なアプローチが重要です。以下に、検討から導入までの一般的なステップをご紹介します。

STEP1 現状分析と課題の明確化

まずは現在の業務プロセスを詳細に分析し、以下の点を明確にします。

・業務にかかる時間・コスト

・住民からの不満や改善要望

・職員の負担が大きいポイント

・紙や対面に依存しているプロセス

・他自治体との比較

この段階で、単なる「デジタル化」ではなく「何を解決するためのデジタル化か」という目的を明確にすることが重要です。

STEP2 導入システムの検討と選定

課題が明確になったら、解決に最適なシステムを検討します。

・複数ベンダーの製品比較

・先行自治体への視察・ヒアリング

・クラウド型かオンプレミス型か

・カスタマイズの必要性と範囲

・他システムとの連携可能性

・将来的な拡張性

特に重要なのは、「使いやすさ」です。いくら高機能でも、住民や職員にとって使いにくいシステムでは本末転倒です。デモ環境での試用や住民モニターの意見聴取なども効果的です。

STEP3 財源確保とデジタル活用推進事業債の申請

システムの概要が固まったら、財源確保の検討に入ります。

1.導入・運用コストの詳細な見積り取得

2.デジタル活用推進事業債の適用可能性確認

3.財政部門との事前協議

4.起債申請に必要な資料作成

申請にあたっては、「自治体DX推進計画」との整合性や、住民サービス向上効果を具体的に示すことがポイントです。

STEP4 導入プロジェクトの実施

予算が確保できたら、実際の導入プロジェクトに着手します。

・プロジェクトチームの編成

・詳細要件の確定

・データ移行計画の策定

・テスト計画の作成

・職員操作研修の準備

・住民への周知計画立案

この段階では、ベンダーと自治体の役割分担を明確にし、定期的な進捗確認の場を設けることが重要です。特に、現場職員の意見を取り入れる仕組みを作ることで、使い勝手の良いシステムになります。

STEP5 運用開始と効果測定

システム導入後も継続的な改善が必要です。

・利用状況のモニタリング

・住民・職員からのフィードバック収集

・運用上の課題抽出と改善

・効果測定と次期計画への反映

特に重要なのは、当初設定した目標に対する効果測定です。「住民の利便性は向上したか」「業務効率化は実現したか」を定量的に評価し、必要に応じて機能改善や運用方法の見直しを行います。

デジタル活用推進事業債を活用した自治体DXの推進のまとめ

デジタル活用推進事業債は、自治体のデジタル化を強力に後押しする財政支援制度です。特に斎場施設予約システムや広聴システム、施設予約システムのような、住民サービス向上に直結するシステムの導入には最適な制度といえます。

この制度を活用することで、以下のようなメリットが期待できます。

1.財政負担を軽減しながら最新のデジタル基盤を整備できる

2.住民の利便性向上と業務効率化を同時に実現できる

3.限られた人的リソースを創造的な業務に振り向けられる

4.災害時や感染症流行時でも行政サービスを継続できる

ただし、成功のためには「デジタル化」自体が目的ではなく、「住民サービスの向上」や「持続可能な行政運営」という本質的な目標を見失わないことが重要です。

当社では、多くの自治体での導入実績をもとに、デジタル活用推進事業債を活用した斎場施設予約システムや広聴システムの導入をトータルでサポートしています。現状分析から要件定義、システム選定、導入プロジェクト管理、そして運用後のフォローアップまで、自治体DXの各フェーズに応じた支援が可能です。

デジタル活用推進事業債の活用をご検討の自治体担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。住民サービス向上と業務効率化を両立する、最適なデジタル化の道筋をご提案いたします。

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