現状の課題認識
現在の広聴業務を取り巻く環境は、かつてないほど複雑化しています。市民ニーズの多様化が進む中で、働き方改革による生活様式の変化、高齢化社会の進展、在住外国人の増加など、様々な要因が絡み合って新たな課題を生み出しています。
1. 市民ニーズの多様化と複雑化
・ライフスタイルの変化に伴う24時間対応への要請
・世代間格差による異なるコミュニケーション手段への対応
・多言語対応の必要性増加
・専門性の高い相談内容の増加
2. 行政リソースの制約
・慢性的な人員不足による対応力の限界
・予算制約下での効率的なサービス提供の必要性
・職員の業務負荷増大とワークライフバランスの課題
・専門知識を持つ人材の確保困難
3. デジタル化への対応圧力
・自治体DX推進計画への対応義務
・セキュリティ対策の強化要請
・デジタルデバイドへの配慮
・システム導入・運用コストの管理
これらの課題に対応するためには、従来の延長線上の改善ではなく、抜本的な業務改革が必要となります。
市民満足度向上のための3つの戦略
これらの課題を解決し、真の市民満足度向上を実現するため、以下の3つの戦略を軸とした改善計画をご紹介します。
1. データドリブンアプローチ(※)の確立
従来の経験や勘に頼った業務改善から脱却し、具体的なデータに基づく科学的なアプローチを導入します。過去の問い合わせデータを詳細に分析することで、市民ニーズのトレンドや季節変動を把握し、予防的な対応が可能となります。
(※客観的なデータに基づいて意思決定を行う手法)
①データ収集・分析の強化
・AIを活用した自然言語処理による問い合わせ内容の自動分類
・リアルタイムダッシュボードによる状況把握
・定期的な市民満足度調査の実施と分析
・SNSやオンライン掲示板での市民の声の収集
②KPI設定と管理体制の構築
・応答率、解決率、処理時間などの定量的指標の設定
・市民満足度スコアの継続的モニタリング
・部署別、職員別のパフォーマンス可視化
・ベンチマーク自治体との比較分析
2. マルチチャネル化の推進
市民との接点を多様化し、それぞれのライフスタイルや好みに応じた最適なコミュニケーション手段を提供します。従来の窓口・電話対応の質を向上させつつ、デジタルチャネルを充実させることで、真の意味での24時間365日対応体制を構築します。
①デジタルチャネルの拡充
・投稿フォームの機能強化と使いやすさの向上
・AIチャットボットによる初期対応の自動化
・SNS(LINE、X、Facebook)を活用した双方向コミュニケーション
・オンライン予約システムの導入
②従来チャネルの最適化
・窓口レイアウトの見直しとプライバシー確保
・電話応対マニュアルの標準化と品質向上
・郵送・FAXでの対応プロセスの効率化
・訪問相談サービスの充実
3. 職員の能力開発とモチベーション向上
システムやツールの導入だけでなく、それらを効果的に活用できる職員の育成が成功の鍵となります。計画的な研修実施と、部署を超えた知識共有の仕組みを構築し、組織全体の対応力を底上げします。
①体系的な研修プログラムの実施
・システム操作に関する技術研修
・接遇・コミュニケーション能力向上研修
・データ分析スキル習得研修
・多様性理解・多文化対応研修
②ナレッジ共有とチームワーク強化
・好事例のデータベース化と共有
・定期的な部署間情報交換会の開催
・メンター制度の導入
具体的な実施計画(四半期別展開)
これらの戦略を効果的に展開するため、年間を通じた段階的な実施計画を策定します。
第1四半期(4-6月):基盤整備期
この期間は、改革の土台となる基盤整備に集中します。現状の詳細な分析を行い、システムの機能見直しと更新を実施します。
・現行システムの機能棚卸しと課題抽出
・過去3年間の問い合わせデータの詳細分析
・職員向けシステム操作研修の実施
・新KPI設定と測定体制の構築
・市民モニター制度の設計と募集開始
第2四半期(7-9月):試行導入期
新機能やサービスの段階的な導入を開始し、小規模での検証を行います。
・追加機能のパイロット導入
・特定部署での新業務フローの試行
・市民モニターによる使用感テスト
・中間評価と改善点の洗い出し
第3四半期(10-12月):本格展開期
試行期間での検証結果を踏まえ、全庁的な本格運用を開始します。
・全部署での新システム本格稼働
・市民向け広報キャンペーンの実施
・職員向けフォローアップ研修の実施
第4四半期(1-3月):評価・改善期
年間の取り組みを総括し、次年度に向けた改善計画を策定します。
・年間実績の総合評価
・市民満足度調査の実施と分析
・職員アンケートによる内部評価
・次年度以降の計画策定
・成果報告会の開催と情報公開
期待される効果と成果指標
本改善計画の実施により、以下のような効果が期待できます。
・問い合わせ対応時間の削減
・市民満足度スコアの向上
・処理待ち案件の削減
・職員一人当たりの処理件数向上
・システム利用率の向上
・市民サービスの質的向上と均質化
・職員の業務満足度とモチベーション向上
・組織全体の対応力とレジリエンス強化
・市民との信頼関係の深化
・行政の透明性と説明責任の向上
まとめ
市民満足度の向上は、単なるシステム導入や業務改善だけでは達成できません。データに基づく戦略的アプローチ、多様なコミュニケーションチャネルの整備、そして何より職員の意識改革と能力向上が重要な要素となります。
新年度に向けて、これらの要素を総合的に考慮した改善計画を組織全体で共有し、着実に実行していくことで、真の市民サービス向上を実現することができるでしょう。また、計画の実行にあたっては、定期的な見直しと柔軟な対応も必要です。社会情勢の変化や市民ニーズの変化に応じて、適宜計画を修正していく姿勢が重要となります。
市民満足度向上という目標に向けて、職員一人一人が主体的に取り組む組織文化を醸成し、継続的な改善を進めていくことが、計画成功の最も重要な要因となるでしょう。新しい年の始まりとともに、より良い市民サービスの提供に向けた挑戦を開始していきましょう。
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