
最後の将棋会館
先日12月20日、東京・将棋会館で僕にとって最後の対局がありました。来年1月以降の対局は2024年10月に新設された千駄ヶ谷駅前の新将棋会館で行います。既に事務機能は新会館に移転しており、年内対局が全て終われば新将棋会館に全て移行することになります。
1976年に建設された現将棋会館は公式戦だけでなく、棋士を目指す奨励会の対局も全て行われます。
振り返って思い出すのは奨励会時代のことが多いですね。
やはり歳を取ると昔を美化してしまうのでしょうか(笑)。
初めて将棋会館を訪れたのは12歳頃のときでした。「ここが将棋の総本山かー」とドキドキしながら会館に入ったのを覚えています。14歳で奨励会に入会し、定期的に通うようになって、日常に組み込まれていくうちにそういう感慨は無くなっていきましたが、悲喜交々たくさんの思い出があり、すべての勝敗で文字通り一喜一憂してきました。
特に思い出に残ることはなんだろう、と考えて、ふと思い出したのは、奨励会を退会したときやプロ編入を決めたときではなく、奨励会に入って間もないとき記録係(プロの対局を棋譜につける係・奨励会員の修業の一環)を務めて、たしか終わりが午前3,4時頃でした。
片付けてひと眠りするかなというとき、対局者だった先生が、「銀沙・飛燕」という部屋で、布団を敷いた横で、将棋を教えてくれました。そして朝一緒に会館を出てルノアール(今はもう無いです)でモーニングもご馳走してもらいました。
喫茶店でモーニングというのも初体験で、いろんな話も聞けて楽しかったのはもちろんですが、将棋界って思ったより温かいところだなあと思った出来事でした。思えばこの原体験が棋士に再チャレンジした理由のひとつだったかもしれません。
ちなみに会館最後の対局は残念ながら負けてしまいました。負けたとき、いつもなら風のようにすぐ去るのですが、この日は名残惜しさもあり、少し会館内を巡りました。
2階の研修室の壁に会館との別れを惜しむたくさんの寄せ書きがあって、それを眺めているうちに、もうここには来ないんだな、という気持ちになりました。ずっと様々な戦いを見守っていてくれた将棋会館に一礼して帰りました。
新会館でもたくさんのドラマが繰り広げられていくのでしょう。その一員になれることを誇りにして来年も頑張っていきたいと思います。
今年もお世話になりました。どうぞよいお年をお迎えください。
最後に詰将棋を出題します。まず前回詰将棋の回答です。
詰将棋 前回の問題と回答
詰将棋

5手詰です。
ヒント 相手玉を1三に逃がさないように攻めてください。