2025年3月3日 お役立ち情報

公共施設の管理・運営における課題と展望

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地方公共団体が管理・運営する文化施設、スポーツ施設、生涯学習施設といった公共施設は、地域住民の生活を豊かにする重要な役割を担っています。しかし、これらの施設は、人口減少や財政状況の悪化といった社会情勢の変化の中で、新たな課題に直面しています。特にシステムの有効活用に関する課題は、施設の運営効率の低下や、住民サービスの質の低下につながる可能性を孕んでいます。
本コラムでは、公共施設が抱えるシステム有効活用の課題と、その解決策について解説します。

公共施設の管理・運営における課題と展望

1. 公共施設におけるシステム有効活用の課題

(1) 老朽化したシステムとインフラ

導入から長年が経過したレガシーシステムを利用している公共施設では、新しい機能の追加や他のシステムとの連携が困難な状況となっていることが多くあります。また、セキュリティ対策も十分とは言えず、サイバー攻撃のリスクにさらされていることも少なくありません。

(2) 人材不足とスキルギャップ

IT人材の不足は、地方公共団体全体で深刻な問題となっています。2020年12月に総務省が策定(2024年4月 第3.0版)した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」においても、関係省庁の調査結果をもとに「デジタル人材の確保」や「デジタル人材の育成」について言及されています。しかし、日本全体における労働人口の減少に伴い、特に専門的な知識やスキルを必要とするシステムの運用・管理においては、人材の確保が困難な状況です。

(3) 予算の制約

システムの導入・入れ替えには多額の費用がかかるため、財政状況が厳しい地方公共団体にとっては、大きな負担となります。優先順位の高い他の事業との兼ね合いもあり、システムへの投資が後回しになるケースも少なくありません。

(4) 住民ニーズの多様化への対応不足

住民のニーズは多様化しており、従来のサービスでは満足できないケースも増えています。システムを有効活用することで、よりきめ細やかなサービスを提供できるようになる可能性がありますが、多くの施設では、住民の声を反映したシステムを利活用できていないのが現状です。

2. IT化による課題解決と新たな可能性

(1) クラウドサービスの利用

クラウドサービスを利用することで、初期投資を抑えつつ、最新のシステムを導入することができます。システム稼働後も適宜バージョンアップを行っていくことにより、施設運営上の脅威ともなりうるセキュリティリスクの発生を抑えられます。また、専門知識がなくても簡単にシステムを運用できるため、人材不足の問題解消にもつながります。

(2) マルチペイメント対応

利用料金を徴収する施設では、マルチペイメントに対応することで、より多くの施設利用を促すことができます。マルチペイメントには、窓口に決済端末を置いて対面で支払い対応を行う“キャッシュレス端末決済”や、オンラインの予約システムと連携して、利用者が窓口に来なくても支払いを完了できる“オンライン決済”等、多様な対応方法があります。

(3) スマートロック技術の対応

スマートロック技術を活用することで、施設の部屋に設置する鍵の管理にかかる手間やコストが不要となり、より効率的な運営や、省人化対策が可能になります。また、解錠時間を制御したり、操作ログを確認したりできるようになることで、セキュリティの強化にもつながります。

(4) デジタルサイネージの設置

デジタルサイネージ(電子掲示板)を設置し、施設予約システムと連携することで、当日の催し物情報の一覧や、予約情報の一覧を自動的に表示することができます。また、防災や災害情報の即時配信にも役立てることができます。これにより、施設の利用者が必要な情報を迅速に得ることができ、より快適な利用体験を提供可能です。 デジタルサイネージ導入には初期投資が必要ですが、サイネージを利用して広告収入を得ている施設の例もあり、使い方次第では投資に見合った効果が得られる可能性があります。

(5) 施設利用状況データの活用

公共施設の利用状況データを分析し利活用することで、職員の業務を効率化したり、プッシュ型の営業活動につなげて地域課題の解決に貢献したりすることが期待できます。実際に、施設予約システムから出力した利用状況データをノーコードツールで作成したアプリで分析し、利用者登録団体に向けて利用促進の情報を発信するまでをオートメーション化している施設の例もあります。公共施設を利活用したい民間団体の発掘や、多様化する住民ニーズの分析にも、データの利活用は有効と言えます。

3. 今後の展望

公共施設におけるシステムの有効活用は、単なるコスト削減や効率化だけでなく、地域全体の活性化につながる可能性を秘めています。システムを活用することで、地域の魅力を発信したり、施設の更なる利用を促進するための情報を発信したりすることが可能になります。また、他の自治体との連携を強化し、地域を超えた広域的なサービスを提供することも考えられます。

まとめ

公共施設におけるシステムの課題は、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、クラウドサービス、マルチペイメント、スマートロック、デジタルサイネージ等といった新技術を活用することで、これらの課題を克服し、新たな可能性を切り拓くことができます。地方公共団体は、IT企業や住民と連携し、地域に根ざしたシステムの活用を進めていく必要があります。

このコラムはあくまで一般的な解説であり、個々の施設の状況によって課題や解決策は異なります。公共施設の管理・運営における現状分析や課題の明確化、他団体における事例のご紹介など、気になることがございましたらお気軽に当社までお問い合わせください。

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