
棋士編入試験
第5回コラム「100周年」の最後に記した、西山女流三冠の棋士編入試験が先日終了しました。
試験官である5名の棋士と対戦し、3勝合格3敗不合格というルールです。
残念ながら2勝2敗で迎えた最終局に敗れ、2勝3敗で不合格となりました。
これまでの将棋の歴史で奨励会を卒業、または編入試験を合格して棋士になった女性はまだおりません。
なお私が2005年に合格した棋士編入試験は特例でしたが、2006年に制度化され、これまでに3名の
棋士が誕生しています。約20年間でわずか3名なので、いかに厳しいかが分かるかと思います。
詳しくは下記リンク(報道ステーション+サタステのXアカウント)をご覧ください。
最終局前日に放映されたTV番組からになります。
【将棋界初“女性棋士”誕生なるか 運命の対局へ】
※報道ステーション+サタステのXアカウントのリンクです
西山さんの挑戦は女性で2人目になりますが、あと1勝までとなったのは初めてです。歴史的快挙が懸かったこの大一番、私はABEMAで解説をやらせて頂きました。最終局はデビュー間もない柵木四段という若手棋士が試験官です。
この試験官というのがじつは微妙な立場で勝って何かが得られるわけではなく、また負けて、具体的に失うものもありません。おまけに周りは西山さんをみな応援しているので、完全なヒール役です。
しかし、柵木さんは見ていて怖いくらいの気迫でこの対局に挑みました。相手にとって重要な対局ほど全力を尽くす、という将棋界の哲学を体現していました。
対局は両者の持ち味が存分に出る大激戦となりました。序中盤は柵木さんペースでしたが、持ち前の剛腕で西山さんが追い込んで、終盤はどちらが勝っているか分からない局面へ。
女性棋士誕生を予感したときもあったのですが、しかしながら最後に角をタダで取らせるという絶妙の手順に踏み込んだ柵木さんが勝利を掴みました。両者、力を出し切った名局でいいものをみさせてもらいました。
終局後のインタビュー、西山さんの無念さは考えるまでもないですが、彼女から初めに出た言葉は、難しい立場で試験官を務めた5名の棋士への感謝の言葉でした。心底辛いであろう状況での心遣いにホロリとしてしまいました。 今回は残念でしたが、西山さんならまた挑戦のチャンスを掴むことと思います。物語はまだこれからです。近い将来の女性棋士誕生について頭の片隅に置いてもらえたら嬉しいです。

最後に詰将棋を出題します。まず前回詰将棋の回答です。
詰将棋 前回の問題と回答

詰将棋
