
僕たちの失敗
今回は、ちょっとした失敗談を二つ。 題名は、「そんな歌があったな」くらいの軽いノリで付けました。
まず、3月某日の夜。 順位戦最終局に敗れ、ふらふらと電車に乗って家路についていました。スマホを取り出し、他の対局結果をチェックします。詳しい説明は省きますが、この日の結果次第では「降級点」(成績が悪いと付くペナルティポイントで、たまるとクラスが下がってしまう)の可能性もあり、ほかの対局もかなり気になる状況でした。
そうしているうちに電車は降車駅に到着。ホームに降り、改札を出ようとしたその瞬間、ふと「体がやけに軽い」ことに気付きました。
この日はあいにくの天気で、手に持っていたのは傘一本のみ。 そう、荷物を完全に電車に忘れてきていたのです。手元にあるのはスマホだけ。財布も、その他もろもろも、すべて鞄の中。まさに茫然自失。「負けたうえにこれか……最悪だ」と思いながら、駅員さんに駆け寄って事情を説明しました。
すると駅員さんが、実に手際よく連絡を取ってくださり、20分ほど待ったところで、「先の駅で確保できました」とのこと。このときは本気で「神はいる」と思いました。荷物を受け取ったときの安堵たるや、言葉になりません。
感謝しつつ帰路についたわけですが、よく考えると、荷物を忘れていなければ、何事もなく、ただしょんぼりしながら帰っていたはずです。状況そのものは変わりませんが、気分はだいぶ上向きました。
忘れ物という「失敗」が、結果的には気持ちの浮上という「成功」を生んだ、と言えるかもしれません。
***
さて、また別の3月某日。 前日のバースデー対局に勝利し、対局の疲れが残る、気だるいけれど悪くない気分の朝でした。なんとなくショート動画を眺めていると、ある「掃除動画」が目に留まりました。
シンクの排水口をペットボトルでふさぎ、お湯をためてから、クエン酸と重曹の粉を溶かして掃除する、というもの。 見るからに気持ちよさそうにピカピカになっていて、「これはやってみたい」となります。
じつは私は、けっこう影響を受けやすい性格でして、動画で見た料理などもすぐ作ってみたくなり、実際によく試しています。今回も例に漏れず、台所を探ると、ちょうど重曹もクエン酸もある。これは運命だとばかりに、さっそくシンクに重曹とクエン酸を溶かしつつ、お湯をため始めました。
ところが、この「お湯をためる」のに、なかなか時間がかかる。 ここで魔が差しました。「ちょっとだけ」と、その場を離れてPC作業を始めてしまったのです。
気付けば作業に没頭しており、そこへ「ピチャ、ピチャ」と水が落ちるような不穏な音が。 「しまった!」と台所に走ると──シンクからお湯があふれ、床は見事に水浸しになっておりました。
「俺はなんて間抜けなんだ」と思いながら、ひたすら雑巾で床掃除。 しかし、終わってみると驚いたことに、床がやけにきれいになっているではありませんか。 (ちなみに、肝心のシンクのほうは、動画ほどの劇的な変化は感じられませんでした……)
そんなわけで、この日もまた、「失敗も、悪くないな」と思ったのでした。
***
とはいえ、今回は運がよかっただけともいえます。負けた夜のホームで、荷物が戻ってきたときの安堵。 水浸しの床を拭き終えたあと、なぜか少しだけ晴れやかだった気分。
あのとき感じた「失敗も、悪くないな」という感覚を、単なる言い訳で終わらせずに、明日への注意深さと、少しのしぶとさに変えていけたら――。そんなことを考えさせられた、3月の二つの出来事でした。
皆様も、忘れものとシンクの掃除にはお気をつけて。 そして、ときどきやってくる「僕たちの失敗」とも、うまく付き合っていけますように。

詰将棋 前回の問題と回答
最後に詰将棋を出題します。まず前回詰将棋の回答です。
【前回の問題】

【回答】
▲1一飛△同玉▲2三桂△2一玉▲3一桂成△同玉▲3二金まで7手詰

【解説】
初手▲1一飛が相手方3一金入手への急所の一手になります。以下▲2三桂から頭金を実現させての詰み上がりとなります。
詰将棋
初手が急所です。あと詰将棋は最長手数が正解となります。玉側の応手に気をつけてください。
