2026年2月25日 プロ棋士瀬川晶司コラム

プロ棋士瀬川晶司さんのコラム (第21回)「加藤一二三先生」

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加藤一二三先生

 2026年1月22日、将棋界のレジェンド・加藤一二三先生が86歳で亡くなられました。突然の訃報に、将棋関係者のみならず日本中が悲しみに包まれました。加藤先生は「ひふみん」の愛称で親しまれていました。

 私は1月28日の告別式に参列してきました。加藤先生はクリスチャンでいらっしゃったので、式は先生ゆかりの教会で執り行われました。対局前にお祈りをしてから対局に向かう――そんなお話を以前から聞いていたので、「ここがその場所なのか」と胸に迫るものがありました。

 ひとつ言っておきたいのは、加藤先生は本当に「すごい方」だったということです。「ひふみん=愉快なおじいちゃん」という印象だけの人にも、少しだけ伝えさせてください。

 加藤先生には「神武以来の天才(じんむこのかたのてんさい)」という呼ばれ名があります。これは、加藤先生が若い頃にあまりにも突出した成績を残したため、将棋界で生まれた最大級の賛辞です。文字通り「初代天皇・神武天皇の時代以来、こんな天才は見たことがない」――つまり「史上最高クラスの天才」という、大げさなくらいの褒め言葉ですね。 由来を砕けて言うと、中学生でプロ入りするという異例の早さで棋士となり、プロ入り直後からあっという間にトップ棋士へ。その勢いが「ちょっと規格外すぎる」と話題になり、周囲(棋士や観戦記者など)がインパクト重視で付けた呼び名、というわけです。

 そして加藤先生のすごさは、若い頃の爆発力だけではありません。晩年まで盤の前に座り続け、77歳で現役棋士として対局した“最年長棋士”としても知られています。「将棋は一生の勝負」という言葉を、そのまま生き方で証明したような方でした。

 個人的な思い出で強烈なのは、「カマンベールチーズ事件」です。加藤先生と対局したとき、先生の脇に成城石井の紙袋が置いてありました。中身は何だろうと密かに気になっていたのですが、15時のおやつの時間にその謎が解けました。 先生が取り出したのは、カマンベールチーズ――しかもワンホール。どうされるのかと思って見ていると、なんとそれを丸ごと、ぺろりと召し上がったのです。その瞬間は読みを忘れて思わず見入ってしまったのを覚えています。

 すべてに全力で、真っ直ぐな生き方を貫かれた先生でした。最後にお花を手向けた際に拝見したお顔は、とても穏やかで優しげでした。通い慣れた教会で、多くの方々に見送られて旅立たれた先生。将棋一筋の人生を歩まれ、嘘偽りのない姿勢は、誰もが「こうありたい」と思えるお手本のようなものでした。

 きっと天国では、将棋談義に花を咲かせておられることでしょう。大山先生や米長先生と語り合いながら、藤井聡太さんの卓越した才能について解説されているのか、それとも棒銀の奥深さを熱弁されているのか……そんな光景が目に浮かびます。どうか安らかにお休みください。

※写真は本文とは関係ありませんが、先日YEC同期での呑み会です。なんとひとり社長になりました!私ももっと頑張らないといけません。

詰将棋 前回の問題と回答

最後に詰将棋を出題します。まず前回詰将棋の回答です。

【前回の問題】

【回答】

▲8二角成△同玉▲7一角△同玉▲7二金△同玉▲5二飛△7一玉▲6二飛成まで9手詰

【解説】前々回の7手詰を思い出してください。初手▲8二角成で全く同じ形になります。△9三玉を許さないのが急所ですね。慣れた方にはサービス問題でした。

詰将棋

9手詰です。まずは逃げ道封鎖から。「金のレール」を実現させてください。

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